atoiuma’s blog

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東南アジアの旅 フィリピンまとめ

とりあえずフィリピン編が終わったので、まとめておきます。

 

そもそも、なぜフィリピンに関心を持ったのか。

 

メタルギアソリッドシリーズで有名な小島秀夫監督。彼は無類の映画好きで有名だが、ある日のツイッターで「ローサは密告された」をレコメンドしていた。小島監督のオススメは当たりが多いので、軽い気持ちで見に行った。そしたら、その映画に圧倒された。

 

以下、ネタバレ含む。

マニラのスラム街で暮らすある家族の話。主人公は母ローサ。生活のためにドラッグ販売をしているが、突如身内の裏切りにあい、夫ともに警察に連行される。もし解放して欲しければ金を出せと迫られ(警官の質が恐ろしく悪い)、自分の子供たちに頼んであらゆる方面からお金を集めてもらう。親戚に罵られながら借りたり、家財を売ったり、体を売ったり。その過程で、ドラッグ販売情報を警察にリークした犯人が発覚。彼は自分の家族を釈放してもらうために、ローサたちを売ったのだった。

 

あたり周辺、どこを見ても貧しい。つまり、足りない。足りない分を補うためには、どこかから取ってこなくてはならない。だから警察に情報をリークする。リークされた側は逮捕を免れたいから、また別のドラッグ販売人の情報をリークしたり、親戚に頭を下げて信用を消費しながら金を借りたりする。まるでババ抜きのババをみんなで循環させているかのよう。この映画の息苦しさは凄まじい。貧困とは本当にしんどいものだと再確認した。

 

私には珍しく、映画鑑賞後、パンフレットを購入した。そこにはいろんな情報が載っており、フィリピンの警察の腐敗、ドゥテルテ大統領の麻薬戦争、貧富の格差。ああ、この国に行ってみたい、そう思った。


『ローサは密告された』予告編

 

アジアの病人から、希望の星へ。

 

次に、何冊か本を読んだ。

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)

 

この本は2017年発行で情報も新しく、200ページ足らずの分量だが、これ1冊で基礎知識は大丈夫。良書です。

 

フィリピンはかつて、「アジアの病人」と揶揄されていたが、21世紀に入ってからグローバリズムで息を吹き返し、今では「アジアの希望」とまで呼ばれるようになった国。日本と異なり平均年齢は20代半ば、人口は年々増加(カトリック教徒が国民の8割いることが主な要因。カトリックは避妊をしない)。日本からすれば羨ましい状態。しかし面白いもので、フィリピンには今仕事がない。自分が働きたい量を働けない準失業者を加えれば20パーセントの失業率。そうなると、むしろ人口が多いことがマイナスに働くらしい。なるほど。落合陽一氏は「日本再興戦略」で、日本の少子高齢化はAI導入においては反発が少ないので好条件だと主張していたが、もしフィリピンにAI導入がスタートしたら多くの人間はAIを壊しにかかるに違いない。仕事を奪うな!

 

そんな国内事情のフィリピンがなぜ発展しているのかといえば、国民の1割が海外で働き、外貨を国内に送金していることが大きい。フィリピンの公用語タガログ語と英語。英語を使えるというのは今の時代、プラスに働く。フィリピンには海外雇用庁と呼ばれる機関があるらしく、海外で働くことを奨励している。ちなみにグロリエッタで会ったフィリピン人女性は、数ヶ月後にカタールで働くと言っていた。わお、グローバル。

 

貧富の差が激しいフィリピン。その原因は、16世紀のスペイン統治にある。そこで作られたシステムが今に響いている。途中1898年にアメリカに支配が移るが、フィリピンの富裕層とは仲良くした方が国の支配に有効だと判断したアメリカは、システムをいじらなかった。よって、今でも持つものと持たざる者の溝が深い。

 

ちなみに、実は日本は第二次世界大戦時、マニラを占領している。そこで行われたマニラ市街戦は日米、そして一般のフィリピン市民を含め大量の死者を出した。戦後、フィリピンは日本を敵対視。日本は賠償金を支払い、謝罪を続けた。その結果、今では良好な関係になっている。全く知らなかった歴史だった。

 

フィリピン人の強烈な家族愛。

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)

 

この本は、フィリピンを研究している大学院生が、調査のためにフィリピンバブに潜入し、その過程でフィリピンパブ嬢に恋をし、付き合い、結婚するまでを記したノンフィクション。

 

フィリピンパブの闇がわかりやすく描かれている。知りたい人は読むべし。

 

個人的に一番印象に残ったのが、フィリピンの家族スタイル。

 

先ほどの本にもあったように、国民の1割が海外に行って実家にお金を送金してフィリピンの経済は回っている。パブ嬢は立派な稼ぎ頭である。そんな彼女たちがフィリピンに帰国すると、親戚の有象無象が歓迎しにくる。しかし彼らの目的はお金。ガンガンせびって回収が終わったらずらかる。

 

親は日本で必死に働いて得た娘の金を使っていい立地に家を買って、メイドを雇って生活する。不自由のない生活。それでも彼女たちが帰ってきたらまたせびる。さすがにもう渡せないというと、途端に不機嫌になる。なんだそれ。それが親というものか?

 

それでもパブ嬢は、家族を愛している。家族は大事だと主張する。これって日本人には共感しづらい家族愛だと思う。フィリピン人女性と結婚するということは、その家族と結婚することだと聞いたことがあるが、これを読む限りでは「一族」の間違い。すんげえたくさんいろんなものが付いてくる。それを知った上で結婚をした著者(20代!)はすごい。将来が輝かしいものになることを祈るばかり。良書。

 

老人の居場所はフィリピンにある。 

フィリピン在住の著者が書くノンフィクション。引退後フィリピンに渡った日本人に密着したもの。

 

この本はフィリピン本というよりも、高齢者の幸福論だった。

 

驚いたのは、この国では30歳差、40歳差の日本人男性、フィリピン女性のカップルが珍しくないとのこと。74歳で子供を作った人もいるという。すごい、フィリピンでは引退しても青春できる!

 

もちろん、そこには「お金」が絡んでくる。それは本人たちも気づいている。でも、それでも、若い女性と恋愛し、一緒に生活できるのは喜びだ。日本にいたら全く相手にされないし、ちょっとでも病気や怪我をすれば施設行き。それよりはこっちの方がずっと楽しい!68歳でフィリピン女性とマンツーマンで英語を学び「将来は結婚したいですね」と語る男性。彼には生きる張りがある。

 

この国には老人ホームがほとんどない。なぜなら、家族で面倒を見るからだ。経済発展により徐々に失われていく流れはあるが、まだ健在である。フィリピン人にはホスピタリティがあるのだ。お金が絡んでいるとはいえ、入院したら若い女性がしっかりと世話をしにきてくれる。それはやっぱり嬉しいことだ。

 

もちろんフィリピンは日本より不便である。医療のレベルも日本ほどじゃないし、インフラはイマイチ、台風、昼間からのカラオケによる騒音、フィリピン女性との付き合い方を間違えれば、身ぐるみ全部持っていかれる。それでも、人によっては日本よりもずっと楽しい生活が送れる。ちなみに、女性は微妙みたいです。。。

 

実際に行ってみて思ったこと。

 

  • 英語、めっちゃ通じる

公用語が英語だから当たり前なのだけれど、新鮮な感覚だった。接客の際、最後に「sir」をつけられたのはアジアではフィリピンが初。物乞いの子供も話せることには驚いた。

  • 発展途上感あり

レストランや宿にガードマンがいることは、危険があることを意味している。駅にはエスカレーターがない。雨が降るとすぐに道路が冠水する。サイクルリキシャが走っている。全体的にまだまだ未発展な印象。しかし同時にロックウェルという富裕層のエリアもあって、貧富の格差は確かにあるのだなと実感した。

  • 人懐っこく明るい人柄

全体的にフレンドリーな印象。これについては本にも記載されていた。英語でコミュニケーションできるし、仲良くなるのは難しくないかと。ただ時間にルーズな側面が見られたので、そこは受け入れましょう。

  • 別に危なくなかった

マニラは危険な都市だという情報は結構聞いていた。私の職場の上司は、ショッピングモールで銃を突きつけられたらしい。彼は胡散臭いので嘘をついてるかもしれないが、実際に大統領が「犯罪者は、必要であれば殺す」と宣言している国だ。毎月関係者が1000人亡くなっていることを考えると、やっぱり怖い。しかし、実際に行ってみると、特に他のアジアの国と変わらない。一人で夜歩いていても怖いとは思わなかったし、何も盗まれていないし、ドラッグの勧誘もなし。まあスラムは危ないんだろうけれどそこには近づかなかった。

  • また行きたい

割と長くいたけれど、イマイチ把握しきれていないので、今度はセブ島も含めて訪れたい。できれば、40歳差の日本人男性とフィリピン人女性のカップルに会って話を聞いてみたい。きっと面白い話がたくさん聞けるんだろうなあ。

 

長くなりましたが、こんな感じで。

 

次は、マレーシア編。