先日、熱海に行く途中の電車内で読んだ。あまりに面白すぎて没頭し、海を眺めることもせずに一気に読み終えてしまった。今回はその感想を。
ちなみに、しょぼい喫茶店自体には既に2回訪れているが、まだ著者であり店主の池田さん(えもてん)には会えてない。それはそれで面白くて、毎回違う人とお話ができるのも立派な価値だ。
感想
本当に面白かった。
何がいいかって、まずアジカンの後藤さん、phaさん、借金玉さんが推薦しているのがいい。そりゃ読みたくなるわ。帯の推薦文を誰が書くかって大事ですね。
んで、表紙をめくると、このメッセージである。
この時点で私の期待値は上がっている。
さらにページをめくって、目次へ。
第1章、僕は働きたくなかった。なんて訴求力のあるタイトルなんだろう!この時点で私の胸は高鳴った。
そして、第1章の7ページだ。
働いている間ずっとスイッチを入れ続けている、あの感じが本当に無理だった。「ちゃんとしていなきゃいけない」あの感じがすごく疲れてしまう。バイト先に行った瞬間、本当の自分を捨ててちゃんとした自分を演じるのが辛かった。
ああ、すごくわかるわ。私も苦手だわ。だから、今まで続けられたバイトは皆自分らしくいられるところだった。細かいルールがあったり、過度な演技が要求されたり、不機嫌臭が蔓延しているところは続かなかった。共感。うまく言語化できなかった感覚を言葉にしてもらって、納得感すごい。
たった7ページしか読んでいない段階で、絶対に面白い本だと確信した。で、実際にすごく面白い本だった。
ざっくり内容を書くと、就活に失敗して眠剤を飲んで死にたくなっていた大学生のえもてんさんが、親友との何気無いやりとりをきっかけに生きる気力を取り戻し、phaさんやえらてんさんに影響を受けて自営業で生きていくことに決め、ネットを通じて同志であるおりんさんと出会い、2人で実際に店を出してしまう話だ。そして最終的には、結婚してしまう話だ。すごくテンポが良くて、ドラマチックで、小説を読んでいるような気持ちになった。でも、実話だ。おりんさんの長めのあとがきは泣けた。こんなことって、起こるんだ。人生捨てたもんじゃないな。
面白かったという感想は本人たちに失礼な言葉かもしれない。でも、本当に面白かったのだ。主人公のえもてんさんが絶望から立ち上がって、あちこち頭をぶつけながら希望を見つけて、問題を解決して、時に調子に乗ったりしながら行動し続ける姿。劇的なおりんさんとの出会い。成功と挫折。ご両親やえらてんさん、カイリュー木村さんなどのイカした登場人物。これ映画化できるんじゃないか。
また、最後の方に飲食店の始め方、運営の仕方が少し語られている。これが結構勉強になって、しょぼい喫茶店は3つの側面から運営をしているらしい。しょぼ喫のストーリーを知らない人を相手にする普通の喫茶店モード(この時は緊張するらしい)、ネットや本などでストーリーを知っているコミュニティモード(肩の力を抜いて働けるらしい)、そしてイベントを開催するモード。これらを単体でやっていくのは難しいので、ミックスしていくのが良いとのこと。喫茶店モードだけでいくとハイクオリティを求められ続けるし、コミュニティだと常連ができるまでが大変だし、やはりそれだけで経営していくのはしんどいと。なるほど。。。
良いなあと思ったのは、
「しょぼい店は、人柄がいちばんの商品です」
「とにかく機嫌のいい人であり続ければ、徐々にではありますが、人は集まってくることも学びました」
そうですよね、機嫌って大事ですよね。学校や職場で不機嫌を味わったり疲れ切っている人がわざわざお金を出して行きたい場所は、戦場じゃない、くつろげる場所だ。先日熱海に行った際、いろんな個人経営のお店を訪れたけど、私の優先するポイントはまさにそこだった。気持ちのいい対応をされたら、リピートするわ。
まとめ
とても素晴らしいエモい本だった。生きにくさを感じている人たちの新しいバイブルになるかも。
是非とも、えもてんさんやおりんさんに会ってみたい。そして、早く飲むチーズケーキを食べたい、いや、飲みたい!